Sugie Amazon Diasuke Interview

このインタビューは2014年8月に行われたものです。

ここで杉江選手は、格闘技引退後の心情や自身初めての道場オープンについて語っていますが、

当時は新道場の件がオフレコだったため結局記事を公開していませんでした。

その後10月頃から道場開設が具体的となり、記事公開を検討しようかとなったのですが

一方で愛娘の優希ちゃんが「拡張型心筋症」という重篤な病気と診断され、

いまは道場のことも一旦保留状態に。

そんな厳しい状況にある杉江選手ですが、本人の希望もあり今回記事を公開することとなりました。

アマゾン選手の筋トレの合間に行なった、まったりモードのインタビューですが

格闘技引退後の心境や、指導についての考え方の変化などが訥々と語られています。

AMA-2

杉江アマゾン大輔が語る、3年間の勤め人生活と新たなる目標

――「一騎討ち」では元同門の細川選手が見事優勝しました。初代王者を持って行かれましたね(笑)。

そうですね。僕も出たかったです……(笑)。でも細川が勝ってよかったと思います。柔術をやっている身としては、やっぱり他競技の人ではなく柔術家に勝って欲しかったし、一番いい結果になったかなと思っています。ただ、100%彼が勝つとは思ってましたけどね。ルールも柔術に近いし、黒帯で階級も一番上だったし。渡辺直由さんは一線を退いていましたし。

――さて、いまのアマゾンさんの日常について教えてください。いま昼間はジムのトレーナーの仕事をやっているんですよね。

10時から20時か20時30分までフィットネスのインストラクターをしていて、21時からは格闘技の指導をしています。ここは公武堂マックスというジムで、ネックスグループ所属ジムの一つです。

――そういえば日系ブラジリアン道場のホシャ柔術でも教えてるんですよね。

ホシャは月に一回レッスンに行なっていたんですがもう契約が終わっていて、いまはフレンズっていう小川柔術の系列道場に月に一度行っています。

――日系ブラジリアンの人たちとの交流はどうですか?

ホシャはみんなスパーリングが本気で来るので大変でしたね(笑)。練習内容が毎回ほぼ出稽古みたいな感じでした。

 

ヘルニアで格闘技を引退し、競輪選手にチャレンジへ

――格闘技を引退したときのことについて教えてください。

引退したのは首のヘルニアが原因でした。それで競輪の受験に挑戦してみようと思ったんです。首が悪くても身体は動かせたし、競輪は選手寿命が長くて55歳ぐらいでもやっている人がいるんですよ。あと、地元の岐阜県は競輪が盛んで、知り合いのつてで師匠を紹介してもらうことができたんです。それできちんとアライブを辞めて、師匠に弟子入りをして、競輪選手を目指していくことにしたんです。

――それは何歳のときですか。

30は越えていました。でも競輪に年齢制度がなくなって受けることができたんです。それから受験までの間、5ヵ月ぐらいやっていました。

――競輪というと、坂道を全力でかけあがるような練習風景が思い浮かびますが。

そうそう。そういう感じです。そりゃ〜もう追い込みますね(笑)。結局試験は受かりませんでした。それで、一応受験もして区切りが付いたし、あと1年って考えるともういいかってなってしまって。あと1年続ける精神力はなかったですね。そこが自分の弱さかもしれないです。

――今、首の方はどうなんですか。

いまはもう大丈夫です。現役時代には3回ぐらい神経障害をやっているんですよ。1回目は左手の握力、2回目は左の大胸筋、3回目が右の三角筋。神経に傷がついちゃって力が入らなくなるんですよ。いまも完治はしていませんが、怪我とつきあいながらなんとかやっていけるようにはなりました。

――その後は今のフィットネスジムに就職したんですね。

もともとトレーナーの資格を持っていたのでそれを生かして。競輪時代が無職だったので、まずはお金を貯めようと思いました。嫌になるほど仕事をやってみようと。昼は仕事をして、仕事後にパーソナルトレーニングをしたり、ときには仕事の営業をかけに行ったりという生活をしていました。

――営業ってなんですか?

たとえば高校の柔道部とかに行くわけです。土日に指導しますよって。

――なるほど、トレーナーとしての営業をかけるわけですね。

そうです。そんな生活が慣れてくると、週に一度ぐらいはってことで格闘技を再開したわけです。

AMA-1

競輪受験失敗、そして次の目標に向けて充電期間スタート

それで梅村先生のご好意でネックスの大須に週に一回練習させてもらいに行くようになったんです。その後、たまにレッスンをさせてもらうようになり、やがて定期的に指導させてもらえるようになりました。フィットネスの仕事についた当初は、夜はパーソナルトレーニングを請け負うことが多かったんですが、段々と格闘技のレッスンをすることが増えていき、気づいたら週に7回レッスンが入っていて。自分でそういう営業をかけていたこともあるんですが(笑)。

――(笑)。

そうするうち、こんどは試合出てみようかなという気になって、最初はマスターでゆっくりやっていこう。まずは全日本マスターで優勝だなんて思っていたんですが、今年のマスターに出てみたら、相手が中村大輔さんで全日本よりレベルが高かったという(笑)。

――日本人最強の二人ですからね。しかし、就職後にも結局戻ってきてしまうというのはやっぱり柔術が好きなんですね。

(小声で)オフレコですが、本当は競輪をやめたときに自分の道場を出そうと思ってたんですよ。

――ああ、そういうことですか……。

でも物件を見て回っているとコストとか現実が色々見えてくるじゃないですか。簡単にはいかないなと。あと競輪で一回失敗しちゃってるので、まずはしっかりお金を貯めよう、3年間はしっかり仕事をしようと決めたんです。

――いきなり道場開くよりは、本業やりながら夜もレッスンをした方が確実にお金が貯まりますからね。

そうです。良い物を出そうと思ったらそれなりに資金も必要なので、まず確実にお金を貯めていこうと。その手段がパーソナルから柔術レッスンに変わっていったということです。それで柔術を教えるようになっていくと、こんどは戦績をもっと作っていこうと思うようになって、それでまずはマスターに出てみよう、減量してみよう、そして全日本に出てみようってなっていったわけです。でも当初はここまで試合をするようになるとは思ってませんでした。

AMA-3

――昨年はパウロ・ミヤオ選手や岩崎選手との試合で敗北を喫してしまいましたが。

パウロ選手に関して言えば、もちろん実力差はあるんですが、正直な所、あの頃は連戦が続いて腰痛があったのも大きかったです。出るか出ないかでずっと悩んでいたんですよ。それがなくても20点以上取られていたとは思いますが、でも負けるにしてももっと攻めていっても良かったかなとは思いますね。防御に回ってしまったのが良くなかった。パウロ選手は作りが強いのでそこを突いてたたみこまれてしまった感じがあります。
岩崎選手ももちろん強かったですね。あと、コンディション不足や気持ちのゆるみもあったと思います。下になったあとも極められるだろう、返せるだろうと思っていたら終わってしまった。

――なるほど。気持ちのゆるみもあったと……。

連戦が続くと試合に飽きてくるんですよ。僕は誰に勝ちたいっていうのはあまりないんですが、大会によって気持ちにムラが出るので……。連戦する中で気が緩み、コンディションが悪くなってしまう。あれ以降、コンディションだけはしっかり作るようにしています。

 

普通に昼間働きながら柔術をするということ

――あの頃はまだムンジアルに出ると言っていましたが。

言ってましたね。でもモチベーションが落ちてきています(笑)。

――それはまたなぜ?

僕は勝ち目がある試合を狙ってしまうところがあるんです。単純にタイトルが欲しい(笑)。でも、今の状況を考えると、海外の試合は勤め人の立場だと難しいですね。ワールドマスターズも考えてますけどいまの会社は社員も少なく有給が取りづらいので難しい。

――現実との戦いですね。

そうですね。ずっと格闘技だけをやっていた時期と、いまみたいに働きながら格闘技をやっている時期を経験してあらためて考えて見ると、格闘技しかやっていない人間が、仕事をしながら時間をやりくりして格闘技をしている人に対して、彼らが強くなるように教えていくのってけっこう難しいのかなと思ったんです。時間をやりくりするのは普通の人にしてみれば当たり前のことだと思うんですけど、格闘技だけやっているような選手にはそういうことはわからないでしょ。その時間のやりくりをした上でレベルアップする方法を自分でしっかり体験して伝えていくのも大事なのかなと思うようになりました。

――世界のトップ選手が2部練、3部練やってる練習内容を伝えても、一般の人には現実的ではないですからね。

僕もそっち側だったと思うんです。でも、限られた時間の中、タイムマネージメントをして高いレベルに持っていく方法を教えていくのも大事だなと。フルタイムで練習しているような相手に、働きながら柔術をやっている選手がいかに勝つか。効率のいい練習というか、時間をフルに使いたいですね。格闘技のプロはたくさん練習に時間を割いていると思うんですけど、空いている時間もけっこうあると思うんですよ。僕は夜の時間を割いて勉強したり……、格闘技だけじゃなく、自分の身になることをしていくことも大事だと思うようになりました。

――昨年末の試合後のインタビューでは、身体を壊すまではやりたくないということを言ってましたが。

自分で言うのもなんですけど、100%出しきっちゃうほうなんですよ。やっぱり壊れるまでやるのはよくない。今はブレーキをかけるようにしています。真剣にやるときは真剣にやりますが、やっぱり楽しくやりたいですし。

――ついやりすぎてしまう?

「あと少しやりたいけどやりたくない」っていうようなときがあるじゃないですか。そこであえてやらない。やると怪我をしてしまうので。昔は格闘技の戦績がすべてで、そのために生きていたようなところがありましたが、いまは指導でお金をいただいているし、怪我をすると指導に支障がきてしまいますから。練習できなくなってしまうのもいやですしね。それに、追い込んだら勝てるとも思わない。僕も今はプロ練みたいなことはやっていません。強くはなりたいけどそれが全てではないし、テクニックを細かく追求したい人もいるだろうけど、僕はとにかく楽しくやりたい。一般の人は柔術をやって汗をかいて楽しいって思ってると思うんですけど、そういうところを大事にしていきたいですね。

――そうは言ってもアマゾン選手は試合では勝ちにこだわりますよね?

無茶苦茶負けず嫌いなんですよ。負けるのが死ぬほど嫌いなんです。でも、無理せず楽しくやりたいというのもある。考えてみると、いままで戦ってきた中で本当に負けたくないって思ってやったのは去年の中村大輔戦だけですね。

――あれは初対戦ですよね。みんな注目していました。

めちゃ疲れました。中村さんはやっぱりすごいですね。日本人じゃ一番強いんじゃないですか。

AMA-4

――いまは少し休養でしょうか。

そうですね。試合に出すぎて気持ちが切れちゃいました。それまで出てなかったので、一気に溜まっていうるものをばーんと出していたんですが、同じ相手ばかりになったりすると落ちちゃいますよね。塚田選手、高本選手、加古選手とか偉いなぁと思います。僕は1年ぐらいが限界でした。

――あの3選手も仕事をしながらですからね。

柔術だけだと弱くなっちゃうかもですね。時間のやりくりがあるからいいのかも。

――働きながら強くなる、をテーマにしていくと。

生活の質を上げたい。楽しいし、ストレス発散にもなるし、気持ちが前向きになる。自分が好きでやっていることなので、怪我をしてまでやってもバカらしいですから。

――ではムンジアルはもう出ない?

出られたらなぁという感じですね。ポイント制になりますし、そうなるとアジアもレベルが上がってくるでしょう。時間ができるようになったら行くかもですが。年齢も年齢なんで。

今は、空いている時間はすべて道場開設のために

今日はこれからここでレッスンをして、そのあとアライブでフィジカルトレーニングをして、11時ぐらいから英語を習って……。

――え?英語を習ってるんですか。

やってるんですよ。外国人の生徒さんもいるので。英会話スクールとかじゃなくて個人の方に頼んでいるんですが。あとはパソコンも習っています。

――なるほど。すべて道場のためですね。

最近ですけどね。そろそろ道場のために準備をしておかないとと思って。もう今の会社で働き出して3年経ったので、次のステップのために自分ができないことを勉強していこうと。

――じゃあなかなか家族と一緒にいられる時間もないですね。

週に1回ぐらいですね。ただ家にいるのは好きなので時間があいたら家に行くようにはしています。とにかく休みなく働こうと思っていたのでこういう生活ですが、それで朝出勤前に筋トレしたりという生活だと、けっこう死にそうになります(笑)。それも好きでやってることなのでキツいとか言わないでおこうとは思っていますね。

——奥さんはこれまでの仕事の移り変わりについて何か言ってましたか。

嫁さんも働いているのであまり言わなかったですけどね。あと道場という目標も知っているので。

――なるほど。今後のアマゾン選手の新しい格闘技生活、新道場オープンに期待しています。ありがとうございました。

 

AMA-8

 

 


さて、2015年4月以降に行なう予定だった道場オープンですが、

現在は優希ちゃんの状況が好転するまで一旦延期となっています。

いまはまず優希ちゃんの一日も早い回復を祈るばかり。

そののちには、「人生を充実させる」「楽しい柔術」をテーマとした

杉江選手自身の素晴らしい道場がオープンされることでしょう。

なお、優希ちゃんの治療には渡米しての手術が必要であり、

現在、柔術界ではそのための資金を集めようという動きが次々と生まれてきています。

1月4日と12日には合同セミナー&スパー大会「マッスル祭」が、

2月1日にはチャリティ大会「NEVER TAP AMAZON CUP 2015 GUNMA」が開催予定。

これらの収益はすべて杉江選手に届けられるということなので、

杉江選手を応援している人はぜひご参加ください。

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