What is JJGF Interview to Takamasa Watanabe

この夏、大きな話題を集めているヒクソン・グレイシーの新プロジェクト「JJGF」について、評議会の一員である渡辺孝真氏にそのコンセプト等についてお聞きしました。(取材は7月なので、その後プロジェクトが進んでいる部分がありますのでご了承ください) DSC_0014_2709

——今回のJJGFについては設立までどういう経緯があったのでしょうか。

具体的に動き出したのは昨年の末ごろですね。ヒクソンカップの前ぐらいです。実はヒクソンカップのときに、共同創立者のカーロス・ガマ氏とトニー・パセンスキー氏が会場に来ていたんですよ。

——トニーはアメリカでは技術マニアで有名で、DVDも発売していますね。

私は彼のことをあまり知らなくて、ヒクソン先生も実はそれまであまり知らなかったそうです。カーロス・ガマ氏がヒクソンに紹介したそうです。JJGF設立については、ヒクソン先生は以前から世界的な連盟組織を作りたいという思いがあり、今回、フルタイムで運営に携われる人間としてカーロスとトニーの2人が現れたので実現するに至ったそうです。

——JJGFの主なコンセプトを教えてください。

いまあるカリーニョスの連盟は、競技者だけを対象に運営していて、試合に出ない人にはあまり関係がないんですね。そうした競技者でない人たちに向けて何かサービスができないかということが一つ。もう一つはルールの問題です。現在まだ柔術を始めたばかりの白帯や青帯の人たちは、当然、現行のルールで行われている試合を目指して日々練習をしています。しかしその方向性はグレイシー柔術が本来目指すものとは違っています。もうまったく新しい別の競技になってしまっている。

——いまのままだと白帯からダブルガードをやろうとしてしまうかもしれない。

そうですね。まだ始めたばかりの人たちは今の柔術のルールや試合のあり方しか知らないので、本来グレイシー柔術がどういうものだったのか、何を目指していたのかということがわからないと思うんです。本来はバーリトゥードでも使えるし、自分の身を護るためにも使える実戦的な技術であるはずです。いまは柔道やレスリングのようなスポーツ競技になってしまっている。いわば寝技の柔道のようななもので、柔術の一番大切なエッセンスの部分が見失われています。本来は、柔術を身に付けることがすなわち身を護る助けになると考えてもらいたいのに、現実はそうではなくなっている。 実際、最近の若いトップアスリート選手と話したときも、彼らはストリートファイトには全然自信がないと言っていました。ムンジアルのトップ選手だとしても、たしかにレスリングのアスリートやすこしMMA選手と戦うとなるとすこし厳しいかもしれない。アンドレ・ガウバォンやマルセロ・ガウッシアなどムンジアルで素晴らしい戦績を上げている選手がMMAで良い結果を出せませんでした。ヒクソン先生はこうした状況を見て、柔術の将来についてとても悲観的になっています。一つのスポーツとしては良いのかもしれませんが、彼の父エリオ・グレイシーが目指していたものとは違ってきてしまっている。それを修正していくことがもう一つの目的です。

——今回、カーロス、トニーの2人はどういう流れで加わることになったのでしょうか。

カーロスとヒクソンはずっと昔からの友達なんです。カーロスはガマフィリオ大学の学長をやっていた人ですね。

——ガマフィリオ大学! よくメジャー大会のリストに名前がありました。

リオにある柔道が強い学校ですね。でもいまカーロスはJJGFのためにアメリカに移住していて、ヒクソンも少し前までリオに住んでいましたが今はまたアメリカで活動を始めています。

——いまはどのようにJJGFの運営が始まっているのでしょうか。

ヒクソンは柔術界の多くの重鎮たちに意見を聞きながら進めています。自分の身近な人たちだけを集めて運営するのではなく、柔術界の様々なアカデミー、立場の人から広く意見を聞こうとしています。

——JJGFにはどのような人たちが賛同しているのですか。

大物の先生にはみんな招待状を出していて、賛同してくれている人たちがホームページに掲載されています。Council(評議会)として、ジョアォ・アルベウト・バヘート、アルバロ・バヘート、フラービオ・ベーリンギ、ペドロ・サウアー、ヒーガン・マシャード、シルヴィオ・ベーリンギ……みんな大先生ですね。他にもヘンゾ・グレイシーやファービオ・グージェウら、大御所の先生、大きなアカデミーの道場主にはみんな招待状を出しています。

——ルールなんですが、これは提案ということなんですね。

提案です。これは別に使いたくなければ使わなくてもいいし、これから多くの人の意見で変わっていく可能性があります。

——具体的にはどのようなルールなのでしょうか。

まずアドバンテージがないということ。これが一番のポイントですね。ヒクソン先生に言わせれば、アドバンテージというのはサッカーにおいてシュートがゴールのバーに当たったようなものだと言うんですね。バーに当たったら1/2点をもらえるというのはおかしいですよね。「ほとんど極めた」「ほとんどできた」というのは無駄に力を使っただけで意味が無いということなんです。ただし、アドバンテージがないとレフェリー判定が多くなりますし、判定に異議が出てくることも増えると思います。レフェリーで判断しきれない場合はビデオ判定を使っていくそうです。試合はすべて録画をし、インターネットに公開する予定です。

——何マットも何試合も行なっていてもすべてやるのでしょうか。

はい。やると言っています。昔はアドバンテージがありませんでした。同点の場合はレフェリー判定だったんです。でもレフェリーの責任が大きくなりすぎて、レフェリーの負担を減らそうということでルールを変更してしまった。でも本来はレフェリーのことよりまず競技者のことを考えないといけない。競技者にとってこのアドバンテージ制というものが本当にいいものなのかどうか。いまのコンペティションでは、アドバンテージを稼ぐゲーム(戦略)が出来てしまっている。うまくアドバンテージをとったものが世界チャンピオンというはおかしいですよね。 レフェリー判定はアバウトなものになりやすいという意見もありますが、ボクシングだって他の競技にだってレフェリー判定はあります。JJGFでは異議が出た場合はビデオ判定を使いますし、また、選手にはレフェリー判定にならないようポイントをきちんととる試合を目指してもらいたい。実際、ブラジルではとても長い間、アドバンテージなしでやっていました。少なくともヒクソンが競技者だった頃にはなかったんです。

——なるほど。ではレフェリーの責任が重くなりますね。

そうですね。責任も重くなるし、きちんと教育されていないといけない。ただし、人間誰にでもミスはあるので、その場合はセコンドがその場で異議を申し出てもらい、ビデオ判定を行なうということです。

——他にはどのようなルールがあるのでしょうか。

大きいものとしては、攻撃の目的がないグリップの禁止。IBJJFより膠着への警告が多くなります。膠着ばかりしているとマイナスポイントがどんどん入っていきます。

——ワームガードだろうがクローズドガードだろうが……。

どんな体勢でも膠着と見なされればマイナスです。いままでより範囲が広くなりますね。

——他にはどのようなルールの違いがありますか。

その他はさほど大きく違いません。ただし色々な人の意見を聞きながら変えていきます。これは現時点の提案ということです。

——いまは具体的な大会、イベントなどは決まっているのでしょうか。

もしかすると10月にアメリカで開催されるかもしれません(実際にはすでに8月にJJGFルール採用の大会が開催されている)。なお、ヒクソンはいま行われている各種イベントと対抗するつもりはありません。彼がどれだけ大会を開催するかもまだわかりませんし。ただ彼が現状について一つ疑問視しているのは、いまムンジアルで優勝したら世界チャンピオンと呼ばれていますが、一つの大会に優勝して世界チャンピオンと言えるのかということ。来年から黒帯は他の国際大会で勝たないと世界大会に出られなくなりましたが。

——ポイント制のことですね。

たとえばいままでは青帯で何の実績がなかったとしても、ムンジアルの青で優勝すれば青帯の世界チャンピオンになってしまう。日本で柔道の世界チャンピオンになろうと思ったら、国体があったり、色んな大会で実績を積んで世界チャンピオンになるわけですよね。いきなり世界大会に出て世界チャンピオンはおかしいとヒクソンは前から言っていました。なので、そのためのサーキットがあって、様々な大会を勝ち抜いて世界大会に出られるとか。もしくは色んな大会でポイントを積み重ねていってそれでランキングがつくというような形にならなければならない。なので、ヒクソンが考えているのは、JJGFが認定した大会についてそれぞれポイントを設定して、各大会でポイントを重ねていってランキングが上がっていくというというものです。なので、日本でもJJFJ以外の大会もそれぞれ認定していく可能性があります。

——JJFJがJJGFジャパンになるというようなことはあるんですか。

そういうことはありません。JJFJはあくまで独立した組織なので。JJFJ全体が加盟するというよりは、JJFJの大会のうちこの大会とこの大会はJJGFに参加するというようなイメージです。今年はもう準備が間に合わないのでやりませんが、来年からはヒクソンカップで採用していくと思います。ヒクソンカップ以外の大会で採用するかどうかはまだわかりません。

——JJGFというのは大会を主催するというよりは、そういう認定を行なうところということなのでしょうか。

そういう一面もあります。ただし、ホリオン・グレイシーがやっているような帯を与えたりということはしません。JJGFの本部で護身術のコースを受けてもらったり、護身術の指導について認定書を渡したりというようなことはします。また、帯を与えることはしませんが、その人が持っている帯の認定はします。ただし、護身術のコースを受けていないと黒帯は認められません。あとは警察用のコースを作ったり、女性の護身術も行なったりしてそれぞれ認定証を出していくようです。 いまIBJJFも認定証を作っていることについて、前から言っているんですがIBJJFというのは「連盟」ではなくてあくまで一つの会社なんですね。だからあそこで帯を発行するというのはおかしいんです。

——たしかにIBJJFはスポーツの連盟というよりカリーニョスの個人的な事業会社ですよね。

名称が「連盟」なのでそこを誰もが勘違いしている。いわゆる連盟であったら少なくとも役員は投票があるんですね。JJFJもそういう形式にはしているんですが、他にやる人がいないので自分がやっているだけで、本当は自分が退いて他の人にやってほしいし、将来的にきちんと投票制にしていきたいと思っています。ただ、色々と負担も多い立場なのでやりたいという人もなかなかいないかもしれませんが……。
とにかく、IBJJFが発行している帯というのは、どこかのおおやけな機関が認めたものではないので、あくまでカーロス氏が帯を与えたということでしかないわけです。
オリンピックならオリンピックの競技委員会、国なら国のスポーツ省、日本なら文部省か体育協会でしょうか、あとはJOCとか、そういうものに入っていれば連盟として認められる。もしくは、そうしたものと独立していたとしても、連盟と名乗るのであれば役員の名簿があり、任期があるべきでしょう。だから、IBJJFというのは本当に普通のイベント会社なんです。ヒクソン先生はその点についても疑問を持っているので、それとは違った形でアプローチしようと考えたわけです。たとえばルールについても、IBJJFではマンスール氏がルールを決めてどんどん発表していますが、JJGFではいま7名ほどいるカウンシル(評議会)が、これを20人、30人ぐらいの数に増やし、ルールはその評議会で決めていくようにする。みんな多くの弟子を抱え、豊富な経験を持っている人たちばかりなので、きっといい方向に進んでいくのではないかと思っています。とにかくヒクソンは、自分一人でやるのではなく、たくさんの人達の意見を取り入れながらJJGFを進めていきたいと言っています。ヘンゾやホリオンも入るでしょうし、カリーニョスもこのカウンシルに招待しています。彼が来るかどうかはわかりませんが招待はしています。

——なるほど。こうした体制で本来の柔術の姿に戻していきたいと。

そうですね。そして、イベント会社ではなく本当の「連盟」としての活動をしていきたいということですね。

——ちょっと心配なのが、かつてのブドーチャレンジのようにすぐ終わってしまったりということがないだろうかということです。ただし今回はかなり準備もしっかりしているようなので意気込みが感じられますが。

ブドーチャレンジは出資をしているパートナーが止めてしまったので残念ながら続けられなくなってしまいました。

——ヒクソンさんは柔術界のスーパースターですし、最も偉大なレジェンドだと思うのですが、実業家、ビジネスマンとしては一流でないかもしれません。

たしかにそうです。ホリオンほどではないですね(笑)。だからこそカーロス・ガマが共同創立者としているわけです。彼は大学を経営していたわけですから。

——その他のカウンシルのみなさんもヒクソンさんを補佐していくということですね。

そういうことです。カーロスとトニーとあと数人のメンバーが事業を動かしていくと思います。

——スペシャルルールでヒールホールドやカニバサミがありというルールがあると噂されていますが

ホームページにも書いてあるのですが、通常のルールとスペシャルルールがあり、スペシャルルールはメタモリスに近いルールになると思います。私もまだルールを全部確認していませんが、時間は20分で関節技なんでもあり、ポイントなし、時間が終わったらドローだそうです。まだ未定ですが10月に開催されるかもしれない大会で、アマチュアのコンペティション以外にスペシャルマッチでこのルールが採用されるかもしれません。

——最近のモダン柔術的な膠着展開に対し、黒帯ではヒールフックを有りにした方がいいのではという声も出ています。

たしかにそうですね。そういう選手はバーリトゥードに出たら当然そこを調整しなくてはいけませんし。たとえば、ヒクソン先生の道場では、ガードで持ち上げられたら、その時点でマイナスポイントだという意識で練習しています。スラムで落とされることもあるわけですから。三角絞めをかけていて持ち上げられそうになったらすぐに相手の足を抱えるとか、持ち上げられかけたらすぐに自分から三角のクラッチを外すということを指導しています。だから本来は、黒帯はスラムはありにすべきだとも思います。

——いまのJJGFの通常ルールは、ヒクソンさんが考える理想ルールに行く前のたたき台であり、みんなの意見を取り入れながら変えていくというようなことを言っていましたが、渡辺さん個人としてはどのようなルールであるべきだと思いますか。

私が考えているものはそれとは別にあります。できればこうなってほしいというものがありますが、ここで言うことは遠慮しておきます。

——やはり身を護るということがテーマですか。

それもありますが、誰が見てもそこで何が起こっているかわかるルールにしたい。たとえば自分の母親に見せても「ああ、あれでポイントが入ったのね」とすぐにわかるルール。「なんでポイントが入ったの?」「なんであの人が勝ったの?」というようなものではいけない。サブミッションは片方がまいったするのでわかりやすいですが、もしサブミッションで決まらなければポイントがないと全部ドローになってしまうので、どこかでポイントをあげないといけない。そのポイントをどこであげるかという違いですね。

——わかりました。ありがとうございました。JJGFの今後の展開に期待しています。

 

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共同創立者のトニーパセンスキー氏。JJGFオフィスにて。

 

 

 

 

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